想い→対話→ビジョンの共有→伝播|ローカルファースト研究会主催シェフズミーティングに参加

ローカルファーストという言葉を御存じでしょうか?その名の通り、「地域第一主義」です。地産地消をはじめとして、何かモノを買う、サービスを受けるなら、Amazonや大手スーパーなどではなく、地元の商店・企業から買おうという、ライフスタイルや価値観を指します。

昨日は、このローカルファーストについて、茅ヶ崎で中心となって研究し、啓発をおこなっているローカルファースト研究会主催の「ローカルファーストトライアル シェフズミーティング」というシンポジウムに参加してきました。そこで多分な示唆を得ましたので、少しご紹介させて頂きます。

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シンポジウムの前段では、アメリカのオレゴン州にあるポートランドでレストラン「Chef Naoko」経営をしている田村なを子氏の講演。幼少期に体が弱く、保存料や添加物といったものを摂取すると蕁麻疹が出てしまうような状況だったことがきっかけで、その頃からオーガニック食材で食事をしてきた田村氏は、ご自身の離婚を機に子供と愛犬と共にポートランドへ移住。体に良いオーガニック料理を提供するレストランとして「Chef Naoko」をオープンさせました。

ポートランドは最も住みやすいまち、住みたいまちとして人気のある地域。そんな地域で日本人が立ち上げたレストランが大変な人気を得ているそうです。デルタ航空のビジネスクラス・エコノミークラスの機内食も請け負っているほど。講演では、そのストーリーが語られました。

地元の食材にこだわった料理を提供するための「対話」

ポートランドは決して大きなまちではなく、地元食材を使うといっても野菜一つでも供給チャンネルが豊富にあるわけではありません。そのため、いつ・いかなる食材を手に入れられるかを見定めるのが非常に困難です。そもそも、オーガニックとは、化学農薬・化成肥料、そして環境ホルモンや遺伝子組み換え技術を避けて、自然のままの健全な食材を指します。つまり、オーガニック食材は、手に入れること自体がそもそも大変で、コストも高額になってしまう。私は農業について専門性を持っていませんが、性質上、大規模農業に適さないのではないでしょうか。

このような食材自体の性質や、地域から仕入れるというチャンネルの制限などから、レストランの要ともいえる「仕入れ」に関する労力は相当なものです。ましてや、デルタ航空の機内食を請け負うというのは、デルタ航空の求める食事の数を安定的に確保することを意味するため、制限的な状況で実現するのが難しいことは想像に難くありません。

しかし、彼女は3つの観点からそれを実現しました。

  • 農家との「対話」
  • デルタ航空との「対話」
  • お客様との「対話」

一般的なレストランは、農家が提供する食材を調達し、調理して、お客様に提供します。なかなか農家の生産自体にまでコミットする人はいないでしょう。しかし、田村氏はオーガニック食材の重要性をご自身の経験をベースに「これが必要だ」という熱意のもと、長きにわたって農家とのコミュニケーションをおこない、ついには信頼できるパートナーにまでなりました。安定供給を実現するために、農家を信頼する。農家と田村氏は単なる供給者と需要者という関係ではなく、パートナーシップの関係になっています。この背景には、農家と料理人やスーパーマーケットなどがネットワークを組もうとするアメリカならではの環境もあるのですが、日本とは大きな違いと語られています。

デルタ航空と田村氏との関係で特筆すべきは、そこの信頼関係です。おそらく、機内食を提供するというのは、レストランからすると非常に誇らしいことであって、下請け関係のようになりがちですが、デルタ航空は田村氏にかなりの裁量を認めています。それを実現せしめたのはまさに田村氏の熱意。そして、徐々にその反応が広がってきた一般客の声です。オーガニック料理という特性上、コストが上がってしまうため、当初はビジネスクラスでしか提供できなかったのですが、現在はエコノミークラスでも提供できています。これは、一般客のニーズがあったからですが、それを実現せしめたのは、田村氏の熱意に強いパートナーシップを持つ農家の努力と信頼関係にほかなりません。結果的に、デルタ航空も感銘を受け、ローカルファーストの価値観を企業の価値観にまで取り入れました。

これらの取り組みは、元は田村氏の経験とオーガニック料理の持つ力に対する強い情熱に端を発します。そして料理自身の美味しさがあいまって一般のお客様に広がり、小さな店舗から始めたレストランが、今では建築家の隈研吾氏がデザインを手掛けるレストランに。

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隈研吾氏に依頼されたというからには相当なお金がかかっていると推察されますが、隈氏が田村氏の想いに共感し、かなり抑えることができたとか。アメリカ特有のスポンサーシップも背景にあるようです。

人も制度も「ビジョンの共有」がすべて

田村氏の事例は、まさに田村氏の想いと行動力が、共感を生んで、徐々に広がっていったものといえます。上記で書きましたが、田村氏を中心として、生産者、デルタ航空との間に強いパートナーシップが育まれ、消費者に更なる価値提供が実現しています。

私は茅ヶ崎で企業やNPO、そして行政機関のパートナーシップを推進するプロジェクトを進めているのですが、この5年くらいを振り返ってみると、私自身も関係者も、この点にとても反省があります。何かを誰かと成し遂げようとするとき、その前提となるビジョンの共有が非常に重要であると、最近は富に感じていたところ、昨日の田村氏の講演に出会いました。

私の事業のビジョンはお客様と共有できているだろうか?と考えると、残念ながら全くと言っていい程まだ実現できていません。そんな思いから、事業名をこのブログ名でもあるLink-Up(つなげる)に変更し、理念追及型の経営にシフトすることにしました。

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ビジョンの重要性は長きにわたって語られているところではありますが、出来の良くない私には、それが自分の中に落ちるにはかなりの時間がかかったなぁと感じています。

SDGsの推進に向けたLink-Upとしての取り組み。自分の中に使命感として芽生えてきた今、更なるチャレンジを存分にしなければ、と想いを新たにする機会でした。

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【編集後記】

昨夜は青年会議所の理事会でした。ここで学ぶことはまさに上記のことだなぁと最近思い続けています。青年会議所生活残りの5年間、しっかりと学ばなければと思っています。

【昨日の1アクション】

  • シェフズミーティングに参加

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